きしろメンタルクリニック 木代 眞樹先生と意見交換させていただきました
神奈川県川崎市にある『きしろメンタルクリニック』では、精神科・心療内科に加え、物忘れ(認知症)外来や発達障害外来、また発達障害の方向けのトレーニング(ショートケア)を行っていらっしゃいます。
院長 木代 眞樹先生 プロフィール
日本臨床精神神経薬理学会・評議員・指導医・専門医
日本精神神経学会・精神科専門医
日本老年精神医学会・専門医
日本精神分析学会
日本社会精神医学会
日本睡眠学会
日本ADHD学会
日本成人期発達障害臨床医学会
成人発達障害支援学会
『きしろメンタルクリニック』
院長 木代 眞樹先生
『きしろメンタルクリニック』
きしろメンタルクリニック 木代 眞樹先生 インタビュー
先生は聖マリアンナ大学で学ばれてから医療分野として
精神科を選ばれ、数々の経歴を経て、現在『きしろメンタルクリニック』の院長をされていらっしゃいますが、心療内科を選ばれたのはどのような理由からですか?
大学を卒業し、医師になった1989年、母校の放射線医学教室に入居したのですが、全国の優秀な先生方が国内留学の形で勉強しに来ており、活気がある教室でし たが朝早いと7~8時に始まり、仕事が終わるのは0時近くになることも多く、その時間から優秀な先生たちは英語の教科書や論文を数時間勉強して帰宅し、翌日も朝早くから仕事をする、という日常をこなされており、入局して数か月で不適応を起こしてしまいました。ただ毎日の業務をこなすだけで手いっぱいで、熱心に勉強する気力も湧きませんでした。 もう少し生活の質を高めたいと考え、「精神科」は「楽だよ」と先輩に聞いて精神科を選んだのです。けれどその後、務めることになったなった三鷹市にある長谷川病院も恐らく私の知る限り日本中の精神科病院の中では一番忙しく、入退院数も恐らく日本でもトップクラスの病院でした。生活の質を優先して、仕事は8時間だけ行い、後はプライベートな時間を過ごしたい、という理由で精神科を選んだのですが、気づいたら、私のプライベートはほとんどなく、眠る時間以外は精神科医として働いているというワークホリックな人生を送ってしまいました。
当社では片付けが苦手な方への「片付けサポート」を実践しておりますがクライアントさまの中でも双極性障害を患っていらっしゃる方がおりまして担当医から片付けの専門家に依頼して一緒に家の中を片付けるように言われたそうです。片付けも治療の一貫として勧められたとおっしゃっていました。
また片付けサポートのご依頼を受けて訪問する新規のクライアントさまたちの中にも検査はしていないが自分はADHDではないかと悩まれている方も多いのも事実です。
実際に先生のところでも片付けに取り組むことで症状が改善されそうなケースは
ありますでしょうか?
最近、注意欠如・多動症(ADHD)の特性を持たれた方が、片づけが出来ない、ということが広く知られるようになりました。またADHDは双極性障害の併存率も高いので、双極性障害で片づけが苦手な方の中にはADHDが併存されており、片づけが苦手なのはADHDの特性を見ている、というケースがあるように思います。また双極性障害だと思っていたものが、実際はADHDの特性であったという事例も多いのです(双極性障害とADHDは併存することもありますが、両者の症状が似ており、鑑別することも難しい場合があります)。
ADHDの特性により片づけられず、部屋が汚れていると、単身生活であれば、時々訪れた家族や知人から非難されることはあっても、特に軋轢は生じません。しかし、家族と同居していると「片づけられない」ということが家族間での深刻なトラブルに発展し、家族関係が悪化することが珍しくありません。
したがって経済的に許されるのであれば、業者の方にお願いすることもよい方法だと思います。毎回お願いできる方は経済的な理由で限られるかもしれませんが、節目で業者の方にお願いすることで家族の関係悪化が最悪の状態になることを防ぐことが出来るかも知れません。
モノを溜め込みやすい方で不安症と思われる方もいらっしゃいます。
また高齢のクライアントさまのところへも生前整理にお伺いすることが多いのですがモノに対する執着も多く見受けられます。
また身近な人を亡くされたクライアントさまのグリーフケア、トラウマからのセルフネグレクト、育った環境下での両親からのネグレクトなど、片付けられない理由の中に精神的に影響を及ぼしていると思われるケースがとても多いです。
こういったメンタルからのダメージから片付けられないというケースに対しての片づけサポートの形として望ましいのはどういったことだとお考えでしょうか?
これは難しい質問ですね。私のそのような観点から患者さんに接したことがなく、また多くの精神科医も同様だと思います。
今回の質問のようにそれぞれのクライアントの方の心の背景が異なる場合、一般的なコメントをするのは難しいのですが、可能な限りクライアントの方のご希望をお聞きし、それぞれのクライアントの方の意向に従って片づけのサポートをすること、またご家族とクライアントご本人との意向が異なることも珍しくないかも知れません(高齢の親とそのお子さんなど)。クライアントご自身とご家族との間のコーディネートも必要かもしれませんが、それは業者の方の負担も大きく大変なことだと思います。
しかし、それが上手く行った場合は、クライアントご本人とご家族から大変感謝されるのではないでしょうか。それをビジネスとして捉えるとこれは大きな付加価値だとも思います。そのようなことが利用者に伝わると、片づけにおいて家族間で対立されている場合など、そのような方々の依頼が増えるかも知れませんね。
クリニック・カウセリング・ショートケアによる3本柱のチーム医療によるサポート体制を作っていらっしゃいますが、改善までの道のりを教えていただけますでしょうか?
クリニック・カウンセリング・ソートケアによる~精神科の治療は大きく分けて3つあります。向精神薬を使った薬の治療、精神療法(カウンセリング)、電気けいれん療法や磁気刺激療法と言われる身体療法の3つです。
どの方法もそれぞれ重要な治療法でありますが、クリニックなどの外来中心の医療機関においては、なかなか身体療法を行うことは難しいと思います。
したがって、治療として行われる頻度は、薬の治療と精神療法が高いと思います。また、日本の国民皆保険(公的保険)は世界に名だたる大変素晴らしい制度ですが、それが制定された当時は精神科の治療はまだまだ一般的ではなく、公的保険を利用した精神科治療、特に外来治療は他の科の治療と比べるとやりづらい面もあるのです。時間を要する精神療法を公的保険内で行うことはなかなか難しいものがあります。初診時には当院でも1時間枠で予約を取りますが、再診時には患者さん1名にかけられる時間は平均すると5分~10分程度になります。したがってどうしても薬の治療が主になってしまいます。多くの精神科医療機関で時間のかかる精神療法は提携する心理相談室(カウンセリングルーム)において臨床心理士(公認心理士とおい国家資格と両者を取得している方も多い)が自由診療で行っていることが多いのが現状でしょう。
しかし、実際の精神科の診療を行っていると薬の治療を中心とした一般外来のみでは良くならない患者さんも少なくありません。経済的なご負担が可能か場合は、提携する心理相談室にお願いしてカウンセリング(認知行動療養や力動的精神療法など)を併用することで治療がさらに進むことが多いのです。
また当院では発達障害の方向けのショートケアと一般の精神疾患の方向けのショートケアと2つの異なった種類のショートケアを行っています。これは公的保険が使えます。特に発達障害のためのショートケアは高いニーズがあるにも関わらず、まだまだ日本では行っている施設が少ないのが現状です。
発達障害とは、自閉スペクトラム症(ASD)と注意欠如・多動症ADHD)、限局性学習障害の3つをさすことが一般的で、さらにこの3つの特性はそれぞれ併存しやすいと言われています。このうち当院のような一般的なクリニックにはASDとADHDを主な特性とした患者さんがいらっしゃいますが、ADHDは薬の治療がある程度可能ですが、ASDの症状を直接改善する薬は現在のところありません。しがたってASDの方の治療は心理的な治療が主になります。ASDの患者さんにカウンセリングを行うこともありますが、発達障害のショートケアは公的保険で行える有用な心理的な治療と言えます。
可能であれば、薬を主体とした一般外来の治療にカウンセリング、ショートケアとそれぞれの病気に合わせて、治療を組み合わせることが出来れば、その治療の効果も高まると言えます。
片付けカウンセラー 中山ゆうみ コメント
多く片付けのご相談を頂く中で、片付けが出来ないとお悩みの方には、発達障害の傾向がある方、不安が強い方などがいらっしゃるのを感じてきましたが、クリニックの先生が接していらっしゃるのは、より重症な方であるのを理解しました。
ご本人が希望される方には信頼できるクリニックの先生をご紹介しますが、基本的には片付けサポートの中で、一対一でお話しながら、不要なものを捨てたり、過去の気持ちと向き合うなかで、前向きな気持ちやご自分に対する自信などを取り戻していただけると思いました。
片付けのサポートをご希望の方は、お気軽にご相談ください。